株取引をしている人が投資をする時に参考にしたい指標の一つに「EPS(一株当たりの純利益)」があります。この記事ではEPSの計算方法と、どんな時にESPの数値が変化をするのか、株式投資の時にどのように活用するのかを解説します。
もくじ
■EPSとは?EPSで分かること
EPSとは一株当たりの純利益のことで、一株当たりの当期純利益が最終的にどの程度なのかを表す指標です。
株主が持つ一株においての一会計期間の会社の収益性を分析することができ、一株当たりの利益を前期以前のものと比較することで、会社の収益性や成長度を知ることができます。また他社との一株当たりの利益を比べることで、会社の影響を外した収益の分析をすることもできます。
EPSの数値が高いほどその企業の収益性は高く、EPSの数値が低いほど企業の収益は低いと判断できます。M&Aにおける株式交換率を決定する時や、企業目標や基本方針にEPSを組み込む企業もあります。
■EPSの算出方法
EPSの算出方法は簡単です。
当期純利益を発行済みの株式数で割るとEPSを求めることができます。当期純利益とは全ての収益から法人税などのコストを支払った後の、企業の営業による純粋な利益を指します。
例えば税引き前の当期純利益が3億円で、法人税などのコストの合計額が1億2000万円、発行済みの株式数が300万株の場合
EPS=(3億円-1億2000万円)÷300万株
=60円
となり、一株当たりの純利益は60円という計算になります。
■EPSが変化するタイミング
EPSが変化するタイミングには二つの場合が考えられます。
①自社株買い、株式併合による発行済み株式数の現象
自社株買いや株式併合によって発行済み株式数が減少するとEPSが大きくなります。逆に株式分割、新規上場、転換社債の発行、ストックオプション(役員や社員が一定期間内にあらかじめ決められた価格で自社株を購入することができる権利)の支給などで発行済み株式数が増えるとEPSは小さくなります。
②純利益の増加
企業の経営状態が良くなったり、もともと上向きなものがさらに良くなることでその期間内の純利益は増加し、EPSも上昇をします。また経営状態が変わらなくても初期投資を回収することができれば、負債金額に当てる資金が減少するので純利益は増加します。
■株購入時におけるEPSの活用方法
ここでは株式投資をする時にEPSを活用する方法をいくつか紹介します。
①有意義な増資をしている企業かを判断する
企業成長には一定期間ごとに増資をし、新規事業を始めたり事業拡大をすることが必要です。しっかりとプランがある増資であれば良いですが、そうでなければEPSは継続的に希薄化し、低下してしまうことになります。希薄化した株式を持つ企業は投資の価値はあまりなく、高く評価することはできません。
増収後にEPSが一時的に下がったとしても、その後に上昇に転換するのであればその増資は有意義であったと判断できます。有意義な投資を継続的にできている企業であれば、株式投資には適しているでしょう。
②株価がどの程度まで変化するのかを予想する
EPSをPER(株価収益率)でかけることにより株価を計算することができます。PERとは株価が一株ごとの当期純利益の何倍まで買われているのかを表す指標です。
例えばEPSが100円でPERが5倍の株式があったとします。同業種や同程度の企業規模の平均PERが8~10倍であれば、この株式のPERも将来的には8~10倍になる可能性があります。
現在の株価=一株当たりの当期純利益×株価収益率
=100円×5倍
=500円
PERが8倍に上昇した時の予想株価
100円×8倍=800円
PERが10倍に上昇した時の予想株価
100円×10倍=1000円
株価は800円~1000円まで上昇する可能性があるということです。
逆にEPSが100円でPERが12倍の株式会社の場合、同業種や同程度の企業規模の平均PERが8~10倍であれば、この株式のPERも将来的には8~10倍に下がる可能性があります。
現在の株価=100円×12倍=1200円
PERが8倍に下落した時の予想株価
100円×8倍=800円
PERが10倍に下落した時の予想株価
100円×10倍=1000円
株価は800円から1000円まで下落する可能性があるということです。
このようにEPSを知ることで、現在保留をしている株式であれば手放すタイミングを見極めたり、まだ購入していない株式であれば購入するタイミングを考えることが可能になります。
③他の指標を計算するときに活用する
EPSを使って算出できる指標は多くあります。
例えばPERは株価÷EPSで求めることができ、自己資本利益率(ROE)はEPS÷一株当たりの純資産額(BPS)で求めることができます。どの指標も一株当たりの純利益の数字が大切になるので、各指標を投資の判断基準にする時にはEPSを知り、計算することが必要になります。
④吸収合併後の株式購入の時に活用する
M&Aが実施されるときには、株価や評価が異なる企業同士が結びつきます。そのため合併する前に株式交換比率を計算しなければいけませんが、その時にもEPSは使われます。
株式交換比率とは、A社がB社を完全子会社化する時に、B社の株を持つ人に対して一株当たりいくつのA社株に交換できるかという割合のことです。B社の株を4株持つ人に対してA社の株式を一つ割り当てられるのであれば、株式交換比率は1:0.25となります。
この株式交換比率が妥当でなければ株価の急激な変動が起こってしまうことになります。株式の購入や売却の大きなタイミングに活用できるのです。
■EPSの注意点
EPSを見る時に注意しなければならないのはEPSは会社の利益ではないということです。EPSは分母が株式発行数なので、株式の発行が増えるとEPSは下がります。増資やストックオプションなどによって株式の発行が増えるとEPSが減少することもあります。
逆に株式総数が減少すれば一株当たりの利益は上がります。自社株買い、株式併合などで発行株式総数が減少することで一株当たりの利益は上がるのです。
EPSの数値だけではなく、EPSの数値を使い分析を行うことが株の投資には重要です。
■まとめ
いかがでしたでしょうか?
企業の成長を分析できる指標の一つであり、一株当たりの当期純利益を知ることができるEPSは簡単に求めることができる指標です。その会社の収益性や株価の予想、吸収合併した時の株式の購入などさまざまなことに活用をすることができます。ぜひEPSを活用して、有益な株投資をしてくださいね。